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食事介助の看護 安全第一の配置・声かけ・訪問介護をわかりやすく解説
2025年11月08日
食事介助は、ただ「食べさせる」だけの行為ではなく、患者さんの安全と生活の質を守る大切な看護の仕事です。
誤嚥(ごえん)や窒息を防ぎ、安心して食事ができるようにすることが求められます。
特にALSや高齢の方など、自分で食べるのが難しい人にとっては、正しい姿勢や声かけ、訪問介護でのサポートが欠かせません。
この記事では、安全に食事介助を行うための配置や声かけのコツ、訪問介護の流れなどを、現場で役立つ形でわかりやすく紹介します。

食事介助の看護について
食事介助とは、患者さんが安全に食事を取れるように手助けすることです。
ただ食べ物を口に運ぶだけではなく、誤嚥を防いだり、かむ力や飲み込む力を助けたりする役割もあります。
さらに、安心して食事ができるよう声をかけることも大切です。
正しい方法を身につけることで、体調を守り、楽しい食事時間を支えられます。
食事介助の目的
1.安全に食事をしてもらうこと
2.誤嚥や窒息を防ぐこと
3.栄養をしっかり取ってもらうこと
優しい声かけや姿勢の調整によって、食事を「楽しい時間」として過ごしてもらうことも大切な目的です。
対象の見分け方
食事介助が必要な人は、高齢者や嚥下(えんげ)障害のある人、体力が落ちて自分で食べるのが難しい人などです。
まずは、どのくらいの介助が必要かを見極めることが大事です。
そのために、かむ力や飲み込みの様子、体調、既往歴(これまでの病気)を確認します。
一人ひとりの状態に合わせて介助方法を変えることが、安全につながります。
基本の声かけ
声かけは食事介助の基本です。
「ゆっくり噛みましょう」「次は◯◯ですよ」「美味しいですよ」など、安心感とペースづくりを意識した言葉が効果的です。
穏やかな声のトーンと一定のリズムは誤嚥予防にもつながります。
観察と異変時の対応
食事中は表情・呼吸・咳・声の変化を観察し、異変があれば直ちに中断・体位調整・主治医(または訪問看護師等)への連絡など適切に対応します。
安全第一の配置を現場で実践する
安全に食事介助を行うためには、介助する人と患者さんの位置関係や環境がとても大切です。
正しい配置は、介助者が無理な姿勢にならず、患者さんも安定した姿勢で食べられるようにするための基本です。
配置基準
介助者は、患者さんの横か少し斜め前に座ります。
体を前にかがめすぎないように注意し、患者さんがリラックスして食べられる距離を保ちましょう。
椅子や車いすの場合は、腰と背中をしっかり支え、足が床につく高さに調整します。
テーブルは、肘が軽く曲がるくらいの高さが理想です。
ポジショニング
患者さんの頭は少し前に傾け、顎を軽く引く姿勢が安全です。
飲み込みが弱い方には、体を少し横向き(側臥位)にしたり、角度を調整することで誤嚥を防げます。
姿勢を整えることで、食べやすさや飲み込みやすさが大きく変わります。
チーム連携
介助は単独で行うよりも、複数のスタッフで連携することで安全性が高まります。
患者さんの様子を共有し、声かけや食事ペースを統一することで混乱を避けられます。
また、急な体調変化や誤嚥の兆候があった場合に迅速に対応できる体制を整えることが重要です。
訪問介護で安全に支援する手順
訪問介護で食事介助を行う場合は、事前準備や環境整備、家族への説明を含めた手順を守ることが大切です。
安全に介助を行うためには、現場でのリスク管理と患者さん・家族の安心感を両立させることが求められます。
環境を整える
食事前に、椅子やテーブルの高さ、車いすやベッドの位置を調整します。
食器やスプーン、ストロー、タオルなどは手の届く場所にそろえておきましょう。
照明や周囲の障害物も確認して、安全な空間をつくります。
家族への説明
介助の内容や注意点を家族に伝えておくことで、協力しながら安心して見守れます。
「ゆっくり食べるように声をかけてください」「むせたら一度止めて様子を見ましょう」など、具体的に説明することで、家庭でも安全に介助ができます。
緊急対応
もし誤嚥や体調の変化が起きた場合に備えて、対応方法を確認しておきましょう。
呼吸が苦しそう、強くむせる、顔色が変わるなどの兆候があれば、すぐに食事を中止して体勢を整えます。
必要に応じて、救急や主治医に連絡できる体制を作っておくことが大切です。
今日からできる安全な食事介助のポイント
安全な食事介助のポイントは、
1.患者さんの体調や状態をしっかり見ること
2.姿勢や配置を正しく整えること
3.落ち着いた声かけと、ゆっくりしたペースを守ること
4.家族やスタッフと協力すること
これらを意識することで、誤嚥や事故を防ぎ、安心して食事を楽しんでもらえます。
日々の介助を丁寧に行うことが、患者さんの生活の質を高める第一歩です。



