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在宅ケアで気をつけたい終末期せん妄 症状と家族の対応法とは

2025年06月05日

「急に混乱し始めた」「人が変わったような言動をする」――

終末期の在宅介護において、こうした症状が見られることがあります。

それはもしかすると“終末期せん妄”かもしれません。

本記事では、終末期せん妄の基礎知識から、訪問介護の現場で見られる具体的なケース、適切な対応のヒントまでを詳しく解説します。

在宅ケアで気をつけたい終末期せん妄 症状と家族の対応法とは

終末期せん妄の定義と特徴

終末期せん妄とは、死の間際にある患者さんによくみられる精神的混乱状態を指します。

急性かつ一時的に発症することが多く、認知機能や行動、感情の変化が見られるのが特徴です。

特に終末期においては、身体的な苦痛や薬剤の影響、環境変化などさまざまな要因が複雑に絡み合うことで発症リスクが高まります。

患者さん本人だけでなく、家族やケア担当者にも大きな負担となるため、適切な理解と対応が重要です。

発生する主なタイミング

終末期せん妄は、病状の進行が急激になったときや痛みや息苦しさが強まったタイミング、薬剤の追加や変更時など、身体的・環境的なストレスがかかった際に多く発生します。

また、感染症や脱水、電解質異常など身体状態の急変がきっかけとなるケースも少なくありません。

終末期の数日から一週間程度に集中して発症することが多く、突然あらわれる場合もあれば、徐々に症状が増悪していくこともあります。

在宅ケアでの発生状況

在宅ケアの終末期では、入院時よりも環境の変化が少ない分、家族のサポートや慣れ親しんだ空間の中でせん妄の発症リスクはやや低くなる場合もあります。

しかし、医療従事者の常時観察が難しい環境下では、見逃しや対応の遅れが生じる恐れもあります。

家族が初期症状を見逃さず、適切に医療チームと連携を取ることが、せん妄への早期対応につながります。

訪問介護現場における事例紹介

訪問介護では、普段穏やかだった利用者が急に楽しそうな話をしたり、逆に興奮や混乱、夜間の徘徊や大声といった症状を示すことでせん妄が疑われる場合が多くあります。

ある事例では、排尿障害や脱水を背景に夜間だけ混乱し、家族が睡眠不足に陥って介護継続が困難となったケースも報告されています。

早期対応として、医療機関との情報共有や環境調整、適切な薬物治療が求められます。

主な症状と分類

終末期せん妄は、その症状や現れ方によっていくつかのタイプに分類されます。

主な症状としては、意識障害や注意力の低下、幻覚や妄想、異常な行動やコミュニケーション障害などが挙げられます。

症状が日内変動しやすいことも大きな特徴です。

症状の現れ方や重症度が異なるため、適切な評価と分類が対応方針を決める上で重要となります。

意識障害と注意力低下

終末期せん妄では、最も基本的な症状として意識障害が挙げられます。

患者さんは眠気が強くなったり、逆に落ち着きを失って過活動になることがあります。

また、注意力が著しく低下し、会話中に話が途切れがちになったり、周囲の状況を正確に把握できなくなることも多いです。

これらの変化は日内でも大きく変動することがあり、観察力が求められます。

幻覚や妄想の出現

せん妄の症状が進行すると、見えないものが見えたり、実際には存在しない人物がいると感じるなどの幻覚症状が出現します。

また、「盗まれた」「家に帰りたい」といった妄想に苦しむ例も多くみられます。

これらは患者さん自身の不安や恐怖感を大きく高め、家族やケアスタッフを混乱させる原因にもなります。

理解された上での対応が不可欠です。

行動面でみられる特徴

終末期せん妄では、突然の怒りや焦り、不安からくる大声、夜間の徘徊、物盗られ妄想など異常行動がみられることがあります。

普段は穏やかであった患者さんが周囲に危害を加えそうになったり、逆に無気力となることも特徴的です。

症状によっては身体拘束が必要になることもありますが、できる限り非薬物的アプローチが推奨されます。

身体症状と判断力やコミュニケーションの障害

身体症状としては、睡眠障害、摂食の低下、なみだ目や筋肉のこわばりなどがみられます。

また、判断力やコミュニケーション能力にも大きな障害が生じ、自分の意思をうまく伝えられなかったり、会話が成立しないケースが出てきます。

これにより、家族やケアスタッフの精神的負担がさらに増すため、適切なサポートとコミュニケーションの工夫が求められます。

まとめ|終末期せん妄に適切に向き合うために必要な視点

終末期せん妄は、患者本人だけでなく家族やケアスタッフにも大きな影響を及ぼす重要な問題です。

その多様な症状や背景要因を理解し、早期発見と多職種での連携による対応が求められます。

特に在宅ケアや訪問介護の現場では、家族や地域の支援体制を整え、患者のQOL(生活の質)向上を目指した柔軟なケアが大切です。

終末期せん妄は決して特別な現象ではなく、適切な知識と心構えで冷静に対応することが、患者と家族の安心や尊厳につながります。

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